労災認定再審査請求

労災不支給決定に対する不服申立て手続き

 

1.審査請求

労災保険請求について、労働基準監督署長が不支給決定等の処分(原処分)を行った場合、これに不服であれば審査請求により原処分の取消しを求めて争うことができます。

 

審査請求は、決定を行った原処分庁の労働基準監督署長を管轄する各都道府県労働局の労働者災害補償審査官に対し、口頭又は書面で行います。

 

各地の労働基準監督署には「労働保険審査請求書」が用意されていますので、これを受け取り書面で提出すると良いでしょう。単に、審査請求書のみを提出してもいいですが、資料の添付もできます。

 

なお、この審査請求に対して、印紙代等の費用はかかりません。

 

審査請求ができる期間は、平成28年4月1日から改正されており、決定(原処分)があったことを知った日の翌日から3カ月となっています。

 

審査請求を行うと、原処分をした労働基準監督署から審査請求に対する意見書が提出されます。この意見書は、通常は原処分が正しいという内容ですので、それに対してさらに審査請求人として意見書を提出します。

 

労働者災害補償審査官は審査請求の当否を判断するにあたって調査をしますので、通常は数か月時間がかかります。必要に応じて、本人や家族などへの聞き取りもなされることがあります。

 

 

2.再審査請求

審査官が「審査請求を棄却する。」との決定を行った場合、この決定に不服であれば、再審査請求を行うことができます。

 

再審査請求は、東京にある労働保険審査会に対し、書面を提出して行います。再審査請求でも、単に、再審査請求書のみを提出してもいいですが、追加で資料の提出ができます。

 

なお、この再審査請求に対しても、審査請求と同様に印紙代等の費用はかかりません。

 

再審査請求ができる期間は、労働者災害補償審査官の作成した棄却決定書の謄本が送付された日の翌日から2カ月です。なお、審査請求をしてから3カ月が経過しても労働者災害補償審査官の決定がない場合は、審査官が審査請求を棄却したものとみなし、審査請求人は審査請求に対する決定を待たずに再審査請求をすることが出来ます。

 

再審査請求をして数か月してから再審査請求についての判断資料として、すべて冊子にまとめられたものが送られてきます。

 

また、全件というわけではありませんが、審問の機会として、東京に行って審査会に話をする機会があります。

 

その後、また数か月して審査会から判断が出ます。

 

 

3.原処分取消しの場合

労働者災害補償審査官が「原処分を取消す。」との決定をすると労働基準監督署長(原処分庁)が新たな処分をします。通常、新たな処分は労災保険を支給するという内容になると思いますが、内容に不服があることもあり得ると思います。

 

この処分に審査請求人が不服であっても、直接労働保険審査会に再審査請求することは出来ません。

 

この処分は以前の処分と違うのですから、この新たな処分に不服がある場合には、審査請求の上、労働者災害補償審査官の決定を経る必要があります。

 

 

4.労災不支給処分決定取消しの訴え

労働保険審査会が「再審査請求を棄却する。」との裁決をした場合、再審査請求人は6カ月以内に原処分の取消しを求めて、各地の地方裁判所の本庁(山口県であれば山口市所在)に労災不支給処分決定の取消しを求める行政訴訟を提起することが出来ます。被告は国になります。

 

なお、この取消訴訟を提起する場合には印紙代を納付する必要があります。

 

この取消訴訟では、裁判官は厚生労働省の通達や労災認定基準などの行政の判断基準に必ずしもとらわれることなく、事案に応じ判断することができますので、労働保険審査会とは異なる結論となる場合もあります。

 

しかし、この取消訴訟では、労災保険給付を求める原告側(つまり労働者側)に、給付請求権の発生を基礎づける事実関係について主張立証の責任がありますので、労働災害の原因や発生状況を立証し、それが業務に起因したものであることを明確にしなればなりません。

 

これらのことは労災事故に精通した弁護士に任せるほうが良いでしょう。労災事故直後から弁護士に相談し、早い段階から被災労働者側に有利な証拠を集めることが、審査請求や再審査請求、行政訴訟への最善の備えとなります。

 

手続きの流れからもわかるとおり、行政訴訟まで何度も手続きが用意されていますが、スピーディーに判断がなされるわけでは必ずしもありません。全ての結論が出るまで何年もかかってしまう可能性がありますので、早い段階で望ましい結論をもらうように動くことが肝要です。