労働災害に付随する様々な慰謝料請求
労働災害(労災)における慰謝料とは、精神的な苦痛を被ったことに対する損害賠償金のことをいいます。
労災保険では精神的な損害に対する慰謝料は補償されません。
そのため、慰謝料などの労災保険では十分に補償されない損害については、民事上の損害賠償請求により会社等に請求することになります。
1.慰謝料の種類
労働災害における慰謝料には3種類あります。
1)死亡慰謝料
労働者が死亡した場合に遺族に支払われる慰謝料。これまでの裁判例から一応の目安となる相場があります。
・被災者が一家の支柱の場合・・・2800万円
・被災者が母親、配偶者の場合・・・2500万円
・その他の場合・・・2000万円~2500万円
その他には、独身の男女、子供、幼児等が含まれます。
死亡慰謝料については、被災者がその家庭でどのような立場にあったかによって金額に差があります。
また、死亡事故の場合は、被災者の近親者も被災者を亡くしたことによって精神的苦痛を被ることが考えられます。
そのため、近親者固有の慰謝料が認められることもあります。
2)後遺障害慰謝料
後遺障害を負ったことに対する慰謝料です。
等級に応じて目安となる基準があります。
概ね以下のように考えられています。
第1級 |
2800万円 |
第2級 |
2370万円 |
第3級 |
1990万円 |
第4級 |
1670万円 |
第5級 |
1400万円 |
第6級 |
1180万円 |
第7級 |
1000万円 |
第8級 |
830万円 |
第9級 |
690万円 |
第10級 |
550万円 |
第11級 |
420万円 |
第12級 |
290万円 |
第13級 |
180万円 |
第14級 |
110万円 |
3)入通院慰謝料
労災によって怪我をし、入院や通院を余儀なくされたことに対する慰謝料です。
入通院の期間を主な考慮要素として算定されます。
他の慰謝料と同様に基準となる相場があります。
軽い打撲や軽い挫傷等の比較的軽微な怪我である場合には骨折や重傷の事案に比べて減額される傾向にあります。
2.慰謝料が増額されるケース
慰謝料には相場があります。
一方で、これまで蓄積された裁判例のなかで、慰謝料が通常の相場から増額されて認定された事案も多く存在します。
主に以下のような事案で増額される傾向にあります。
①極めて重傷である場合
生死が危ぶまれる状態が継続したとき、度重なる手術が必要であったときなどは、極めて重傷であった(=被災者の精神的苦痛もより一層大きい)ことが容易に推測できますので、慰謝料は20%~30%程度増額される傾向にあります。
②加害者が故意もしくは重過失で怪我を負わせた
例えば、同僚が被災者に対してわざと怪我をさせたり、それと同視できるほどの重大な過失がある場合(多量に飲酒して酩酊状態で業務をしていた等)には、被災者の苦痛は甚大になりますので、慰謝料は増額される傾向にあります。
③労災後の対応が著しく不誠実である場合
会社の責任が明確であるにも関わらず、責任を否定し、一方的に被災者の責任などと主張をして被災者に暴言を吐いた場合など、賠償義務を負っている側が社会常識を逸脱した不誠実な対応をとった場合には慰謝料が増額される傾向にあります。
④その他
その他にも、諸々の事情を考慮して慰謝料が増額される場合があります。
労災の後遺障害とまでは評価できないが症状が残存している場合、将来手術が必要になる見込みであるが現時点で詳細な費用等を確定させることができない場合…、裁判例ではケースバイケースで慰謝料を増額認定しています。
慰謝料は相場があるとはいえ様々な事情を考慮して決定されます。
被災者側は、自身で〇〇の事情があるから今回は相場よりも慰謝料が増額されるべきであるということを主張立証しなければなりません。
しかし、これらの事情を慰謝料増額の理由として主張を適切に構成して証明していくことは簡単なことではありません。
そのため慰謝料請求を検討される方は、まずは弁護士に相談してみることをオススメします。
弁護士は、被災者・遺族から事情をヒアリングするとともに、記録を精査したうえで、慰謝料相場や慰謝料の増額可能性があるかどうかを判断いたします。
慰謝料請求に関してお悩みの方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。