労災における死亡事故について
不幸にして労働災害によって被災労働者が死亡してしまうというケースは後を絶ちません。
製造業における「はさまれ・巻き込まれ」、建設業における「墜落・転落」等がその典型例です。近時は、過労死(脳・心臓疾患)がメディアで取り上げられることもあります。
ご遺族が会社等からご家族の被災と死亡の事実を聞いたときに、冷静でいられることはまずありません。気が動転し、事実を受け入れることは容易ではありません。会社から事故状況について報告を受ける機会があるかもしれませんが、場合によっては不信感が募ったり、真相は闇の中というような状況に陥ったりします。
ここでは、労災によって被災労働者が亡くなってしまったときの対応について、解説をいたします。
まず、死亡事故が発生したときは、労災保険からご遺族に対して、以下の給付がなされます。
・遺族(補償)給付として
・遺族(補償)年金
・遺族特別年金
・遺族特別支給金
・遺族(補償)年金前払一時金
・遺族(補償)一時金
・遺族特別一時金
・葬祭給付(葬儀費用)
これらの給付にはそれぞれ要件があります。詳細は以下に記載する厚生労働省のWEBページをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-7.html
死亡事故に関してご遺族が受けることができる補償・賠償は、労災給付のみに限られるものではありません。
会社側に安全配慮義務違反があるとき、あるいは第三者の加害行為によって被災したときには、会社または第三者に対して、民事上の損害賠償請求が可能です。
民事上の損害賠償請求と労災給付は一部重なる部分もありますが、少なくとも労災保険からの給付によって民事上の損害賠償請求権のすべてが補填される(権利がなくなる)わけではありません。例えば、慰謝料(精神的苦痛に対する賠償金)は、労災保険からの給付に含まれていません。別途、請求することができます。また、遺族(補償)給付のみでは、被災者に発生した逸失利益を全額補填するには足りないということも多くあります。
したがって、死亡事故が発生したときは、まずは労災保険からの給付(その他にも会社からの弔慰金等)を受けるとともに、事故状況を調査して、民事上の賠償請求が可能であるのか否か検討し、可能と判断される場合には、労災保険のみではカバーされない部分について、会社または第三者に対して損害賠償を求めていくことになります。
この判断は専門的な知識が必要になりますので、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。