労災死亡事故の逸失利益・損害賠償について

労働災害で被災者が死亡したとき、労災保険から遺族(補償)給付等を受けることができます。これとは別に、会社または加害者である第三者に対して民事上の損害賠償請求が可能であるときは、死亡逸失利益(被災者が死亡したことで失われた将来の収入から、生存していたら支出していたであろう生活費を控除した金額)の支払を受けることができる場合があります。

 

死亡逸失利益は、以下の計算式によって算定されます。

 

【計算式】

 基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

このままでは非常に分かりにくいため、ケースとして、会社員である夫(35歳。年収600万円)が労災で死亡したときに、遺族である妻と子が受け取ることができる逸失利益を算定します。(被災日は令和4年9月1日とします。)

 

 ①基礎収入額 … 年収600万 

※総支給額。事故前年の収入を用いることが多いです。

 ②生活費控除率 … 30% 

  ※生活費控除率は、被災者の属性(一家の支柱であるか否か、扶養家族は何名であるのか、独身か否か)によって、ある程度の基準が決まっています。本件では、一家の支柱かつ扶養家族(被扶養者)が2名であるため30%とされています。

 ③就労可能年数に対応するライプニッツ係数 … 20.3888

  ※67歳まで働けるという前提で、それまでの年数(本件では67-35で32年)に応じて、中間利息を控除した係数を乗じて算出するものです。ややこしい考えですが、要するに将来もらうお金を現在まとまってもらうという点を考慮して減額する計算方法です。この係数はあらかじめ〇年の場合は〇〇というように定まっています。

 

【ケースにおける計算式】

 600万×(1-0.3)×20.3888=8563万2960円

 

上記のケースでは逸失利益は8563万2960円となります。

ここから、受給済みないし支給決定済みの遺族(補償)給付の金額を控除します。ただし、「特別」と名のつく給付については控除する必要がありませんので注意が必要です。

 

この控除をした残額が、労災死亡事故の逸失利益として会社または加害者である第三者に対して求めることができる金額となります。

 

逸失利益の算定については、被災者の状況によって大きく変動します。また、どの給付を控除すべきであるのか等について専門的な判断を要します。まずは早い段階で専門家に相談することが望ましいでしょう。