フォークリフトの労働者災害に関するポイント

フォークリフトに関する労働者災害件数

 厚生労働省の調査によれば、フォークリフトに関する労働者災害(以下、「労災」と言います。)の件数は、2019年が2145件、2020年が1989件でした。一方、死亡者数は2019年が20名、2020年が31名となっています。

 フォークリフトを使用した作業は、類型的に事故を生じやすい作業として理解されており、労働安全衛生法においても労働者災害防止のための各種規制がなされています。

規制の概要

 労働安全衛生法規則において、フォークリフトは車両系荷役運搬機械等に該当するとされています(同規則151条の2)。

 フォークリフトを使用して作業させる事業者は、作業計画を定めてそれを周知し、指揮者を定めてその者に指揮させなければなりません。制限速度の定めも必要になる場合があります(以上、同規則151条の3ないし5)。いわゆる「現場任せ」は許されていません。

 具体的な作業環境・方法の設定の仕方については、同規則151条の6ないし15に規定があり(導線や立入禁止区域の設定など)、これを踏まえて作業計画及び実際の運用を行わなければなりません。

 フォークリフト固有の充たさなければならない性能や検査・点検、使用法については同規則151条の16ないし26に規定があります。

 これらの規定はやや抽象的ですが、各地方の労働基準監督署や陸上貨物運送事業労働災害防止協会などの団体が具体的な対策例を示していますので、そちらを参考にすると良いでしょう。

実務

 実務上、上述の労働安全衛生法上の規制が遵守されている現場においてフォークリフトに関する事故が生じることはあまりなく、作業計画がなく、また指揮者もおらず、作業が現場任せになっている、といった法規制に反した現場で生じていることが多いです。

 理論上、労働安全衛生法違反があれば直ちに会社に損害賠償義務が認められるというわけではありませんが、裁判例を俯瞰してみると、実務的には労働安全衛生法違反の事実があるとそれがよほど軽度の違反でない限り会社の民事責任が認められていると言ってよいでしょう。

ポイント

 フォークリフトに関する労災に遭われた方は、すぐに労災申請を行う必要があります。上述のとおり、フォークリフトに関する事故では、「事故当時の作業環境」がどのようなものであったのか(≒労働安全衛生法違反があったのか)が極めて重要な事実となります。労災申請がなされれば労働基準監督署の調査が行われ、「事故当時の作業環境」が調査復命書等の形で証拠化されるため、後で訴訟等に発展した場合にも十分に闘うことができます。

 他方、労災申請がなされないと証拠化がなされず、後で重篤な後遺障害が発生した場合などに会社への責任追及を行う際、証拠が足りず十分に闘えなくなるおそれが生じます。

 労災申請から調査開始まではタイムラグがあり、その間に作業環境が変わってしまう可能性もあるため、怪我の程度にもよりますが、職場復帰後に自身で写真・動画を撮るなどして証拠を確保することも検討されるところです(証拠保全といった裁判所を介する迅速な証拠保全手続もあります。)。