食品加工用機械の労働者災害に関するポイント

食品加工用機械に関する労働者災害件数

 厚生労働省の調査によれば、食品加工用機械による労働者災害は、年間約2000件程度発生しているようです。

 食品加工作業中の事故が多いですが、清掃・除去といった非定常作業中の事故も4割強の割合で発生しています。

 食品加工用機械を用いた作業は類型的に事故を生じやすいものとして理解されており、労働安全衛生法においても労働者災害防止のための各種規制がなされています。

規制の概要と留意点

 労働安全衛生法規則において、食品加工用機械に不意に誤って手を入れてしまい巻き込まれるといったことがないように、「覆い、囲い等」を設けるが義務付けられています(同規則第130条の2)。これが最も基本的な安全対策になります。なお、この「覆い、囲い等」は点検対象になりますので(同規則28条)、定期的に有効に機能しているかを確認されていなければなりません。

 労働者は、この「覆い、囲い等」を無効にするような行為をしてはならないと規定されていますが(同規則29条)、実際には、作業効率などの観点からこうした安全装置が取り外されるなどし、会社もそれを黙認し、結果として事故が発生するといった事態も散見されるところです。

 このような事態を防止するため、会社には雇入れ時の安全教育義務が課されており(同規則35条)、食品加工用機械の危険性を十分に説明し、作業マニュアルに基づく指導(併せて、ルール違反に対する人事上の制裁がありうることも告知しておくべきでしょう)を行うことが求められているといえます。

食品加工用機械で被災してしまったら

 作業ルールはあったが現場がそれを守っていなかったため自分も守らずに作業していたら怪我をしてしまった、私的な出来事での疲労で不注意で怪我をしてしまった、というような場合には「自分に非がある。」と考えて労災申請をためらってしまうこともあろうかと思いますが、労災申請自体は必ずしておくべきです。上述のとおり、法は現場レベルでの安全徹底を求めているといえますし、そもそも労働に内在する危険が現実化したことによって発生した事故の被災者を広く救済しようというのが法の趣旨だからです。会社に責任があるかどうかと、労災かどうかは、法律的には別次元の話です(なお、実際の損害賠償請求では、労働者に何らかの落ち度があってもそれは過失相殺において考慮され、会社の責任自体が否定されるケースは少ないという印象です。)。

 労災申請がなされると労働基準監督署の調査により事故当時の作業環境が証拠化されますが、労災申請と調査との間にはタイムラグがあり、その間にいわゆる「口裏合わせ」のようなことがなされることもあります(たとえば、被災者だけが安全装置を解除して作業していたなど。)。

 食品加工用機械を使用する作業現場においては、覆い・囲い等の安全装置が適切に運用されていないことはすぐに分かるので、被災の可能性があると思った場合には、写真・動画を撮るなどして万が一に備えておくことも検討した方がよいでしょう。