墜落・転落事故

 

墜落・転落事故は業務中の事故の中でも、転倒事故に次いで発生頻度が高く、重症化しやすい傾向にあります。業種別では、建設業、鉱業、運送業において発生頻度が高い事故類型です。

労働災害(労災)による死亡者数は年々減少傾向にありますが、例年、労災による死亡者数の約35%前後を墜落・転落事故が占めています。予防策が強く求められる事故類型です。

 

墜落・転落による死亡事故が特に多いのは「建設業」

墜落・転落事故の中でも、特に建設現場で、足場や梁、母屋、屋根等での作業中に落下し、亡くなってしまうという事故が多く、後を絶ちません。平成29年では全業種の中でも、建設業での死亡事故が33%と高い割合を占めています。

 

一例として、建設現場における事故の中でも最も多い「足場」からの墜落・転落による死亡事案の行動内訳(下図)をみると、既に組み上がった足場上での作業中が42%と最も多く、続いて足場の組立てまたは解体作業中が合計35%となっています。足場上を移動中が15%です。足場で作業中の事故が多いのはもちろんですが、移動中でも事故が発生しやすい類型であるため、安全管理が強く求められています。

 

会社、元請けに対する損害賠償が可能なケース

重篤な後遺障害を負ったり、お亡くなりになったりすることが多いこの墜落・転落事故では、補償金額も高額になる(数百万円から数千万円)傾向にあります。

 

また、現場における管理責任として、「安全配慮義務違反(従業員が安全かつ健康に働くことができるように配慮する会社の義務)」や「不法行為責任」などを根拠に雇用先の会社のみならず、元請けに対して相応の損害賠償請求が認められるケースもあります。

 

しかしながら、このことを知らなかったり、様々な事情から請求を控えたりして、労災保険からの給付のみを受け取って賠償請求を終えてしまっている方が多いのもまた事実です。

 

ラグーンにご依頼いただいた事例

ラグーンでは転落事故で亡くなられたご遺族のご依頼を受けて解決した事例があります。

 

【事故の概要】

50歳代の男性がタンク上からタンク内の清掃作業を行っていたときに、タンク内に転落をして死亡したというケースでした。 

 

【依頼のきっかけ】

ご遺族の方は、会社から「被災者の過失で転落した」「事故発生したことは遺憾だが責任はない」という趣旨の説明を受けました。

しかし、ご遺族からすれば、なぜタンクから転落したのか詳細な事故発生状況が分からず、会社からの説明も不十分で、深い悲しみの中にありつつも真相を究明したいという気持ちでいっぱいでした。

真相を究明するため、そして会社に責任があるのであればきちんと賠償してもらいたいという思いでラグーンへご依頼されました。

 

【解決までの経緯】

依頼者から聴取した事故態様のみでは、会社に責任を問えるかどうか微妙なところでした。そこで、依頼者に代わり労災の資料を収集したところ、労働基準監督署が災害調査を行っており、さらに会社に対して指導・処分を行っていたことが分かりました。

明らかになった事故態様は、被害者の一方的な過失ではなく、タンク周囲の衛生状況が劣悪で、人体に悪影響を及ぼす気体を吸引したことで意識不明になり転落し死亡したというものでした。

ラグーンでは会社の労働環境の整備や衛生管理が不十分であった可能性が高く、会社に責任を問える可能性が高いと判断して訴訟提起を行いました。

裁判所は、本件労災事故は被害者の一方的な過失で生じたものではなく、日ごろからの衛生管理が不十分であった会社にも過失があるとして、会社の責任を認めました。

裁判所は、過失相殺をしたうえで、総額2950万円の賠償義務(うち1300万円は労災保険から支払い)を認定しました。

 

【弁護士の目】

被害者が死亡し、かつ目撃者がいない場合、事故態様の詳細が分からず、真相はうやむやにされて、会社も責任を否定する対応をとることがあります。

このような場合、ご遺族の方のみでは専門的知識が不十分であるため、真相を究明することに限界があり、結果として適切な賠償がなされないことも考えられます。

また、会社から「被害者の責任」と言われれば、ご遺族としても被害者の名誉が傷つけられたように感じ、さらに深い悲しみを感じてしまいます。

ラグーンでは、全力を尽くして労災事故の発生状況を検証し、真相を解明するとともに、会社に対して法的責任を追及しました。

本件では、裁判で、会社関係者数名の尋問や刑事記録の取得、現場検証等の考えられる手続きを総動員して真相究明に尽力しました。

 

結果的に、事故状況の詳細が明らかになり、裁判所も会社の責任を認定したため、ご遺族も納得されて解決となりました。