崩壊・倒壊事故

崩壊・倒壊事故は業務中の事故の中でも、比較的発生頻度が高く、重量物が崩壊・倒壊したような場合には、特に重症化しやすい傾向にあります。業種別では、製造業、建設業、運送業において発生頻度が高い事故類型です。

 

崩壊・倒壊による死傷事故が特に多いのは「製造業」

崩壊・倒壊事故は、例えば、積荷が荷崩れを起こしたり、立てかけてあった木材が倒れてきたりして発生します。ときには解体中の建物の壁面が崩落して内部で作業をしていた作業員が重傷を負うといったケースも存在します。

多くの事案では作業手順の周知徹底面において何らかの問題があることが多く、単独作業時の事故であったとしても、労働者だけではなく会社側にも安全配慮義務違反が認められるケースが多く存在します。

 

会社、元請けに対する損害賠償が可能なケース

重篤な後遺障害を負ったり、お亡くなりになったりすることが多いこの崩壊・倒壊事故では、補償金額も高額になる(数百万円から数千万円)傾向にあります。

 

また、現場における管理責任として、「安全配慮義務違反(従業員が安全かつ健康に働くことができるように配慮する会社の義務)」や「不法行為責任」などを根拠に雇用先の会社のみならず、元請けに対して相応の損害賠償請求が認められるケースもあります。

 

しかしながら、このことを知らなかったり、様々な事情から請求を控えたりして、労災保険からの給付のみを受け取って賠償請求を終えてしまっている方が多いのもまた事実です。

 

ラグーンにご依頼いただいた事例

ラグーンでは倒壊事故で重篤な傷害を負った方からご依頼を受けて解決した事例があります。

 

【事故の概要】

40歳代の男性が木造建物の解体作業中に、解体中の壁が倒壊して下敷きとなり、遷延性意識障害(後遺障害等級第1級相当)となった事案 

 

【依頼のきっかけ】

従前のお客様のご紹介でご両親がご相談に来られました。

弁護士からは成年後見申立、労災申請、その後の賠償請求、裁判になった場合の見通し等を丁寧に説明し、依頼することを決断しました。

 

【解決までの経緯】

成年後見人が選任された後、弁護士から相手方に対して損害賠償請求をしたところ、相手方らは責任を争い(被災者自らが危険な行動に出た結果であって安全配慮義務違反はないなど)、交渉での解決は不可能と判断されたので、闘いの舞台は訴訟に移行しました。

 

請求額は億を超えるような事案でしたが、相手方会社の資力の問題があり、和解の金額は数千万円にとどりました。もっとも、労災及び社会保険からの手厚い補償が確保されていましたので、今後の治療には特に支障をもたらすことはありませんでした。

 

【弁護士の目】

労災事案では、企業の安全配慮義務を設定する上でまず労働安全衛生法を参照します。同法は幅広い分野において企業が労働者の安全を守るために講ずるべき措置を規定していますので、同法に反していたということになれば、企業の責任は認められやすくなります。

但し、同法の定めは曖昧で、訴訟では事案に即して義務の内容を具体化する必要があります。その作業をするためには、労働安全衛生法の規定が設けられるようになった根拠(さらには背景となっている技術的知見等)まで遡って調べることもあります。

 労災=企業の民事責任ではありませんので、企業に対する民事責任の追及は類似の裁判例や安全配慮義務等の設定は十分な検討を経て行うべきで、労災だから企業の民事責任が認められると安易に訴訟提起してしまうと本来賠償されるべきであったものが賠償されないといった結果にもなりかねません。

 また、事故状況がはっきりしないと厳しい闘いを強いられることになります。その意味でも、万が一、労災に遭ってしまったら、適切に労災の申請を行うようにしておかなければなりません(労災申請がなされれば通常は「復命書」という書類が労働基準監督署によって作成され、事故状況がある程度明らかにされます。)。